養育費の支払い開始時期と、支払い終了時期

養育費の支払い時期については、個々の事情によって異なり、もっとも早いもので夫婦が別居したときとする判例があります(千葉地裁平成9年9月)。また、審判のあったときからとする例もありますが、一般的には、調停申し立て受理の月からとされるのが一番多いように思われます。

支払い終了時期については、「成人に達する月まで」とするのが多いです。しかし、両親とも大卒であるなどの場合で、義務者の資力がある場合には、「未成年者が満22歳に達する月まで」とすることもあります。また、逆のパターンで「未成年者が満18歳に達する月まで」と定めることもあります。

過去の養育費や婚姻費用の請求

未払いの婚姻費用や養育費について、どこまでさかのぼって請求できるのでしょうか。

婚姻費用や養育費については、別居時を基準とする考え方や調停申し立て時とする説もありますが、一般的には、合意時や審判成立以前の婚姻費用や養育費は認められないとされています。最近では、調停などの「申し立ての時」にさかのぼって支払いを命じるという考えが定着しています。

したがって、養育費や婚姻費用は、相手方の支払いがストップしたままにしておくと、遡って請求できなくなります。したがって、婚姻費用や養育費をもらっていない場合には、なるべく早く、調停を申し立てることが肝要になってきます。なお、当事務所で扱ったケースで内容証明で婚姻費用の請求をしておいて、数か月してから調停を起こしたケースで、内容証明の送達月からの婚姻費用を支払ってもらうことになったケースがあります。

もっとも、過去の婚姻費用の不払い部分は財産分与の手続きで清算でき、また過去の養育費不払い部分は、今後の養育費を定める際の事情として斟酌されるとされています(最判昭和53年11月14日判示)。

離婚訴訟において裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについては当事者双方の一切の事情を考慮すべきものであることは民法七七一条、七六八条三項の規定上明らかであるところ、婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様は右事情のひとつにほかならないから、裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解するのが、相当である。

この場合、いくらを支払うべきであったかは、算定表を基に算出し、義務者の収入が不明な場合には賃金センサスを基準とするものとされています。

とはいえ、実務上、別居していない間の過去の婚姻費用の分担については立証が難しいところがあります。

また、婚姻費用の未払いを、財産分与の中で清算するように妻が求めたところ「妻が長年自力で生活してきたこと、過去に婚姻費用分担の申し立てをしなかったこと」を理由として、当該事情を慰謝料算定に当たり考慮すれば足りるとされてしまった判例があります。

したがって、婚姻費用の未払いを放置するのではなく、しっかり調停を起こして未払いの婚姻費用を請求する意思を見せておく必要があります。

なお、過去の養育費や婚姻費用の支払いを求める裁判はできないとされています。また、過去の婚姻費用を離婚裁判で請求できるかという問題がありますが、これは先ほどご説明したとおり、財産分与の清算として求めることができます。