子どもの親権者・監護権者の指定(決定要因)

未成年者の子どもがいる場合、離婚の際には、子どもの親権者・監護権者を誰にするかを決めなければなりません。

  • 協議離婚 の場合には、当事者間で話し合って、離婚届に記載することになります。
  • 調停離婚 の場合には、裁判所を間に挟んだ話し合いをした上で、どちらかに決めて、調停条項の中に記載することになります。
  • 裁判離婚 の場合には、裁判所がどちらを親権者・監護権者にするのが妥当かを決めることになります。

裁判所が決める場合には、子の福祉に合致しているかどうかという観点から決まります。
要するに、子どもの成長にとって、どちらが親権者・監護権者としてふさわしいかという、あくまで子どものための観点から決められることになります。
具体的な基準としては、以下の4つなどが挙げられます。

  • 1.監護の継続性
  • 2.母性優先
  • 3.子どもの意思の尊重
  • 4.兄弟姉妹の不分離

(1) 監護の継続性

監護の継続性とは、裁判所が最も重視する要素で、基本的に、それまでの生活環境をいじらないことが子の福祉に合致するという考え方です。
例えば、地域の友達、学校、今まで慣れ親しんだ家など、子どもは自分の世界を持っています。
こういった今までの生活環境とのつながりを断つのは、あまり望ましくないということです。
また、それまでの間、誰が監護をしていたかということもが重視されます。
今までの生活で子どもの成長に問題が生じていなければ、それは、それまで監護を行っていた者の監護に大きな問題がないことを意味し、よほどのことがなければ、監護を行う者を変更すべきではないと考えられます。

子と母親

(2) 母性優先

母性優先とは、母親(的役割を果たす者)を親権者として指定するということです。
大きく生活費を稼ぐ役割と、子の実際の監護を行う役割に分けた場合、前者については、養育費でカバーされるため、親権者の指定において収入の多寡はほとんど考慮されません。
子の親権者を誰にするかという決定は、子の実際の監護を行っている者が、子の利益に沿った決定ができると考えられているため、母親(的役割を果たす者)が親権者・監護権者として指定されやすいということになります。
この基準は、子どもが小さければ小さいほど(要するに、手がかかる時期であればあるほど)重視されます。
母親的役割を果たす者は、現在の日本社会では、母親であることが多いこともあり、統計上、8割程度は母親が親権を取得し、1割5分が父親、残りが兄弟姉妹が複数の場合に分けあう形になっています。

(3) 子どもの意思の尊重

子どもの意思の尊重というのは、子どもがどちらの親についていきたいか、という意思を尊重するということです(家事事件手続法65条で明文化されました)。
ただし、条文上も、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮すると書かれてあり、子どもが小さい場合は、ほとんど重視されません。
15歳以上の場合は必要的に意見を聴取しなければならないとされていますが(人事訴訟法32条4項)、子どもの意見がある程度尊重されるのは、一般的には10歳以上くらいからとされています。

(4) 兄弟姉妹の不分離

兄弟姉妹の不分離については、兄弟姉妹は出来る限り親権者を分けないということです。
裁判所は、原則としては、兄弟姉妹は出来る限り親権者を分けないほうが望ましいと考えています。
ただし、この原則はそれほど強いものではなく、別の事情があれば、分けられることもあります。

兄弟

その他

この他に、離婚に際しての有責性(例えば、不倫をした者が親権者として適切か)についてもよく質問がありますが、基本的には、ほとんど考慮されません。
また、実務上、親権者(子どもに代わって契約を締結する代理権などを有する者)と監護権者(実際の面倒を見る者)を別に定める場合がありますが、かなりレアケースであり、ほとんどの場合は、これを別に定めることはありません。
多くの場合は、実際に子どもの面倒を見ている者が、より子の福祉に適した決定をなしうると考えられるからです(例えば、子どもをどこの学校に入れるかなどは、普段から子どもの学力を把握していなければ適切な決定はできません)。

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この記事を書いた弁護士 弁護士古賀尚子 この記事を書いた弁護士
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弁護士 古賀尚子